プライマリケアの現場を見学して       

                  熊本大学医学部6年 坂口文

 

 大学病院での臨床実習を経験する中で、私は自分がこれから学ぶべき事の多さに圧倒されると同時に、大病院での医療以外すっかり見えなくなっていた。

 けれども、医療は、本当はもっと幅の広い世界であり、私が医学生として経験しているのは、その中のごく一部に過ぎないのだと気付いたとき、私は、自分がこれまで体験したことのない世界の一つである「プライマリケアの現場」に行ってみたくなった。 

 そうして、早速インターネットを検索し、PCFMネットの存在を知った。私の突然の申し出を、たかのクリニックの高野先生は快く受け入れてくださり、春休みの一日私は八代を訪れることとなった。

 

 まず初めに感動したのは、高野先生の臨床能力の高さだった。経験と努力に裏付けられた深い知識を根底に持ちつつ、患者さんの心理・社会的背景までを包括的に理解して、終始丁寧かつ親切な態度で診療をしておられた。

 そしてまた、患者さんと医師との関わりがとても自然であることも、私にとっては非常に新鮮だった。病院は、一般社会とは一線を画した特殊な場所であり、そこは非日常地帯なのだと、これまで私は強く感じていた。しかし、たかのクリニックは、地域の日常の中に自然に溶け込んでいるように感じた。

 つまり、患者さんはご近所さんとしてその辺りに住んでいるおばちゃんであったり、子供であったりする。そして彼らの日常生活の一部として病院(クリニック)がある。考えてみれば、医療の原点としてそれはごく当たり前のことなのに、大病院に慣れきった私には、なんだかそのことがとても不思議で、そしてとても温かく感じられたのだった。

 

 今回の経験を経て、私はなんだか自分の将来に可能性が広がったように感じている・・・が、なにはともあれ、まずは沢山の経験を積み、地道な努力を続けて、早く一人前の医師になりたいと思う。

 

 最後になりましたが、今回このような体験をする機会を与えてくださった高野先生、PCFMネットの方々に大変感謝しています。ありがとうございました。